テレカスタムのJBを作ろうとしたきっかけは、押入れの中から見つけたPUでした。そいつは、私が10代の頃に使用していたギターのブリッジ側に乗っていたDuncan SH-4"JB"です。
この"JB"というのは、Jazz&Bluesの略という話ですが、当時はJeff Beckモデルなんて言われていた
PUですな。
というのも、セイモアダンカンとジェフベックの間で取引されたテレギブの存在があったからでしょう。
ジェフベックのファンだったS.ダンカンが50年代のテレボディ(アッシュ)に60年代のローズネックを
わざわざメイプル指板に張り替えて組み上げたギターと言われています。
そしてPUには、60年代のフライングVから取り出したP.A.Fをリワインドしたと言われています。
60年代のP.A.Fという事は、恐らくアルニコ5を使っているのでしょう・・多分・・。
SH-4"JB"もアルニコ5ですしね。
テレギブでの演奏といえば、前回の記事にも載せました邦題「哀愁の恋人たち」です。
といってもライブでのテレギブの登場回数は、少ないようですけどね。
S.ダンカンは、ヤードバーズ時代のトレードマークだったエスクワイヤーに当時のジェフのメインギターで
あったレスポールのパワーをという思いがあったのかなぁ・・なんて思います。
家の押入れから発掘されたSH-4"JB"も当時は、テレボディのギターに乗っておりました。
テレボディにハムバッカーというのは、非常に相性が良いと思うんですよね。
さて60年代のフライングVから取り外したP.A.Fといっても・・・
あのボビンは、本物なのかなぁ?って疑問があるんですよね。
ジェフベックのテレギブは、ブリッジPUにダブルホワイトでネックPUにゼブラです。
このアイボリー系のボビンが使われだしたのが60年代という事ですから、フライングVに乗っていても
おかしくありません。
ですが・・
ゼブラですら数が少なく、ダブルホワイトとなると更に・・です。
ちなみにゼブラでもスクリュー側のホワイトは、更に少ないらしいですね。
まぁ、当時の適当な管理(現在も管理は、いまいちらしいですがw)の中で生まれた規格外の製品ですし
少ないというだけで音が違うわけでもありません。
しかし、そんなに都合良くゼブラとダブルホワイトの一緒に乗ったフライングVだったのか・・疑問です。
では、ボビンだけ他を使ったのか?
とすれば、P.A.Fから使ったものは、マグネットだけという事になりますね。
そして、DuncanPUで評判のPUといえば、SH-1"59"も有名でしょう。
その名の通り59年頃のP.A.FをモデルとしたPUらしいですが・・・
これもアルニコ5を使っています。
でも実は、58〜9年頃のP.A.Fってアルニコ3がメインなんだそうです。
中には、アルニコ2を使っているモノもあるとか?
ターン数は、58よりも59の方が多いらしいです。
P-90から始まりハムバッカーに変化して年々パワーを上げていったという事なんでしょうね。
60年代に入ると更にパワーのあるアルニコ5を使い出します。
勿論、正確にどこから切り替わったという事は、無いと思いますが・・
59年モデルというのであれば、アルニコ3を使うのが本道かと思います。
でも、S.ダンカンは、アルニコ5を使っています。
ここにSH-4"JB"の謎というか・・ヒントがあるように感じています。
SH-1"59"を発売した当時は、もうすでにパワーを求められていたのでは、無いでしょうか?
コピーモデルを作るのでは無く 59年頃のニュアンスを残しつつ当時の音楽に合わせたのが
SH-1"59"だったのだろうと推測します。
そして、更にハイゲインなモノを求められたところから生まれたのがSH-4"JB"だったのだろうと。
SH-4"JB"の発売から随分と時間を経てプロトタイプ"JB"というPUも発売されました。
SH-4"JB"を開発するに辺りいくつもの試作をしたうちの1つという名目で発売されたかと思います。
このSH-4"JB"の開発のテーマに先に書いた時代に求められたハイゲインというのもあるかと思います
が・・・
やはりジェフベックに渡したテレギブへの思いもあったのだと感じているのですが・・どうでしょう?
Jazz&Bluesという名前は、いかにも後付っぽくないですか?
テレギブが製作されていた当時のジェフベックが使っていたアンプは、アンペグだったと思います。
なかなか歪まないアンプだったようで、ゲインを稼ぐ為にペダルを使っていたようです。
それがカラーサウンドのOverDriverですね。
エスクワイヤーからレスポールにギターを変更したのもパワーを求めてだったのだろうと考えると
そのジェフベックにプレゼントするギターには、パワーが必要だったはずです。
そこで60年代のP.A.Fをリワインドする際にターン数を増やしたのではないでしょうか?
そう考えるとSH-4"JB"の"JB"は、やはりジェフベックへのオマージュというか・・
単に商標の問題だけという感じもしますが、それではロマンがありませんしねw
そして後に出たプロトタイプです。
これは、S.ダンカンの手巻きという事らしいですが、使った事のある人の話では、SH-4"JB"と比べて
ローゲインらしいです。
ターン数の問題もあるでしょうが、それ以外にもテンション等も違うのでしょうね。
そして、このプロトタイプこそがテレギブに乗ったPUに近いのではないかなぁ・・なんて思うのです。
テレギブを作った当時は、それでも十分ハイゲインだったはずのモデルもSH-4"JB"の販売する頃には
ゲインが足りないために更に巻いたと・・。
そして、SH-4"JB"を発売してから随分後にやはり本物を・・なんて思いから・・
いや、商売として美味しいなんて話では、またロマンがなくなりますしねw
その辺の背景には、アンプの進化というモノも付いて周るのだと思います。
80年代にロックといえば、やはりマーシャルアンプが王道でした。
ちょうどJCM800なんかも出た頃ですしね。
その当時だとSH-4"JB"というPUは、非常に人気があったと思います。
LAメタルなんて言葉も生まれた頃でしたが、ソロイストモデルに1PU+FRTなんてのが流行っていた
頃の話です。
ただ、現在のマーシャルアンプの主流であるJCM2000辺りは、JCM800と比べると相当ハイゲイン
なアンプです。
もう、PUにパワーを求める時代では、無いのかもしれませんね。
今のアンプにSH-4"JB"を使うとあまりにドンシャリ過ぎであったり、ゲインが高すぎます。
いや・・好みであれば、それで良いと思いますが・・私には、少々扱いにくく感じました。
そして、この話が前回の続きの「音速 その2」へ繋がる事になるわけです。